引っ越しの日に、想うこと

夫の転勤が決まってから、あっという間の一ヶ月でした。

新しい街での住居探し、諸々の手続き、段ボールの梱包をしているうちに、引っ越し当日を迎えてしまいました。

仕事の都合で、先に夫は移動してしまい、引っ越しの立ち会いは私ひとり。

段ボールを積み上げ、動かせる家具を一か所にまとめ、あとは引っ越し業者が到着するのを待つだけとなりました。

時間が少し余ってしまったので、お世話になったこの部屋を、最後に綺麗に磨くことにします。

結婚してすぐに入居した、このアパート。夫とふたりで、「夫婦」としてスタートした場所でした。

付き合っていた頃よりも、楽しい日々がありました。

付き合っていた頃にはなかった、些細なことでの衝突もありました。

一緒に大笑いしたこともあれば、怒りをぶつけあって何日も無言のまま過ごしたことも。

かたく絞った雑巾で床を丁寧に磨きながら、めまぐるしく過ぎて行った時間を思い出していました。

寝室のドアにある小さな傷は、新しくベッドを買った時に、部屋の中の配置で意見が分かれて何度も模様替えをしながらうっかりぶつけてしまった時のもの。

これ以上部屋に傷を増やさないようにと、結局夫が折れて、私の好きなレイアウトに決めさせてくれたんだっけ。

キッチンの床にあるへこみは、料理にまだ慣れなかった私が、鍋を落っことしてしまった時のもの。

あの頃に比べたら、料理のレパートリーもずいぶん増えたものです。

そんな風に、積み重ねてきた毎日を慈しみながら、これから先向かう新しい街でも、暮らしを続けていくのです。

引っ越し業者に荷物を引き渡し、からっぽになった部屋に深々とお辞儀をしてみました。

沢山の思い出をありがとう。

次にこの部屋に住む誰かの暮らしも、あたたかく、鮮やかなものでありますように。

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